イベントちらし

たくさんのご参加ありがとうございました!

2023年4月16日(日)川崎市の養子縁組里親フォスタリング機関「かわさき里親支援センターさくら」主催で、「よ~しの日」啓発イベントを開催しました。
【会場】川崎市産業振興会館 & Zoom

当日は会場:56名、オンライン:68名、合計124名の方にご参加いただきました。参加者アンケートにも82名の方がご回答くださいました。

ありがとうございました。

このページは、当日の参加者アンケートで書いていただいた感想などのご紹介、時間の関係でお返事できなかった質問への回答や、講師:志賀志穂さんからのメッセージなど満載のレポートになっています。多くの方にご覧いただきたいと思います。ただし、本ページの一部(内容、テキスト、画像等)の無断転載・無断使用を固く禁じます。本ページをそのまま、シェアしてただけるようお願いいたします。

①「よ~しの日」啓発イベントの開催目的

日本財団は特別養子縁組制度を広く周知し、理解を深めていただくための記念日として、「4月4日を養子の日」と制定しています。

かわさき里親支援センターさくらでも、市民、地域社会に「特別養子縁組制度」「里親制度」を広め、多様な家族のかたちを知っていただくこと、子どもが地域社会で育まれるために、地域での見守り隊が増えてほしいとの思いを持ち、「よ~し(養子)の日」啓発イベントを企画しました。

②イベントの内容

  • 川崎市の里親制度の説明・かわさき里親支援センターさくらの紹介
  • 講演 テーマ「地域とのつながりの中で家族を築く」 講師:志賀志穂氏
  • 質疑応答

③参加者アンケートデータ

アンケートで回答してくださった参加者の年代、お住まい、参加理由などをまとめました。こちらよりご覧いただけます。

④参加者のご感想(アンケートより抜粋)

※アンケートでいただいた文面のままのご紹介です

  • 特別養子縁組の家族が地域で暮らしていくことについて、深く考える機会になりました。
  • 地域や子どもとの関わり方などを考えていく上で、良いヒントになりました。子どもは家庭の中だけでなく、社会の中で育っていくので周りの理解やサポートも充実していけばいいと思います。
  • このようなイベントは少しずつ社会を変えていくんだろうなと感じました。私の人生も、今日をきっかけに変わるような気がします。
  • 養子当事者の方のお話も聞きたいです。
  • 川崎市の事例が知れてよかった。
  • 志賀さんのお話、とても興味深く、お伺いしました。現在、保育士養成校に勤務しておりますので、学生にも里親制度・特別養子縁組制度について、より具体的に伝えていきたいと思います。
  • 参加してよかったです。当事者の志賀さんの飾りのない言葉を聞いて色々考えさせられました。周囲にどう伝えるか、子どもの思いと親の思いは違うこと、障害に対する考え方・・。この講演でしか聞くことができなかったし、考えることもなかったかと思います。ここまで開示していただいた志賀さんに感謝です。
  • 志賀さんの養親としての具体的なエピソードが聞けてよかったです。また、地域や子どもとの関わり方などを考えていく上で、良いヒントになりました。子どもは家庭の中だけでなく、社会の中で育っていくので周りの理解やサポートも充実していけばいいと思います。結局は、どのように生きていくのか、家族とは何か、深く考えさせられました。ありがとうございました。
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このほかにも、たくさんの忌憚なきご意見、熱い感想メッセージ、次回のイベントへの期待など、多くの声をいただきました。ありがとうございました。

⑤質問と回答(当日回答できなかった質問について)

志賀志穂さんにお時間をかけて丁寧にご回答いただきました。

里親研修をこれから受ける者です。担当の方に勉強しておくべき事を聞いたら「試し行動」について学んで下さいと言われました。何で学ぶのが1番良いでしょうか。

(かわさき里親支援センターさくら 回答)
試し行動については、参考になる本として『試し行動と試しではない行動を乗り越える里親―ベテラン里親に学ぶ子どもの育て方―』(福島里美著)があります。本などを読んで知識を得ることも大事ですが、先輩里親や施設職員などに実際のエピソードを聞くなどしてみると、より具体的なイメージを持つことができるのではないでしょうか。

(志賀志穂さん 回答)
先輩里親さんに実際に子どもと暮らしてみて大変だったこと、上手くいったことなどの実例を聞くことがイメージしやすく、我が家では助かりました。たとえば埼玉県には『埼玉里母の会』(※埼玉県内の里母の有志が集まり、里子をより良い養育環境で、育ち・育てられるように設立した当事者団体)が、里親たちの自助交流の場が広がることを目的にサロンが開催されていて、経験豊富な先輩方から直接話を聞くことのできる場が設けられています。ほかの自治体も同様なつながりはあるかと思いますし、最近では児童相談所管轄区域を越え、全国でつながることのできるオンラインの里親会もあります。

これから委託待機になりますが、仕事はフルタイムだと厳しいでしょうか。いつでも辞められる仕事が良いのか悩んでいます。

(かわさき里親支援センターさくら 回答)
交流期間にはお仕事を調整していただく必要もあるかと思いますが、共働きフルタイム勤務で、保育園を利用しながら養育されている家庭も増えている印象です。お子さんの年齢や状況にもよると思いますが、あるご家庭では、委託から保育園入園までの期間、両親そろって育児休暇を取得され、仕事復帰されていました。

(志賀志穂さん 回答)
私自身も働きながら保育園を利用し、ワーママとして育てています。現代では多様な家族のあり方が広がって、社会も変わりつつあります。平成29年1月1日から「改正育児・介護休業法」では、特別養子縁組が成立するまでの監護期間も育児休業の対象になりました。友人の養子縁組家庭では、パパが育休とって、その間にママは通常通りに出勤するなど、やりくりしているご夫婦もいます。

障害についてですが、委託前に児相さんは全てを教えてくださるのでしょうか?こちらから聞かないと教えてもらえないのでしょうか?

(かわさき里親支援センターさくら 回答)
すでに障害があるとわかっている場合には打診の時点でお伝えされると思いますが、お子さんの年齢が低ければ低いほど障害のあるなしはわからず、成長と共に障害がわかる場合もあります。

(志賀志穂さん 回答)
児童相談所は委託する前に里親さんが養育で困らないようにと、お子さんの情報は伝えてくれていると思います。ただ委託時に見えない部分の障がいについては、あとになってからわかることがほとんど。たとえば発達障がいの特性は、2~3歳頃に気付くことが少なくないようです。さらにADHDは、8~10歳頃に診断を受けることが多いと言われているそう。昨今増えてきた、産まれてすぐに乳児委託されるケースの特別養子縁組里親の縁組の成立時期は、(子どもの抱える背景によって変わるものの)だいたい1歳前後が多いですよね。だからこそ縁組が成立した後も、私たち養親の方から、児童相談所や里親会の仲間と継続的につながっていくこと=子どもの育ちを応援してくれる、チームによる助け合いの育児を心がけることも、重要な視座なのではないでしょうか。児童相談所とのお付き合いは、どうしても構えてしまう養親さんのお気持ちも分かるのですが、やはり児童相談所との信頼関係は大切にしてほしいなと思います。些細な不安も正直に相談することで関係性を築き、児相が私たち夫婦を、子どもの幸せのための「チーム養育の仲間」だと信頼し、子どもの未来を託してくれたのだと信じています。

一生懸命里子を育てている里親さんがいらっしゃる一方で、委託解除の際に、子どもや里親の意見を聞かずに措置を行うなど、現在の里親制度に課題を感じております。里親として本気で子どもに向き合われている志賀さんご自身が考える、里親制度の課題に関してお聞かせくださりますと幸いです。

(志賀志穂さん 回答)
その措置が、本当に子どもの幸せな未来を描くためのものか、いかなる時であっても「児童の福祉の増進」の制度であることは、決して忘れてはいけない倫理観だと思っています。ご指摘のとおり、里親アドボカシーはもちろん大切なのですが、そもそも赤ちゃんを出産する前も後も、生母さんが安心して子どもを育てることができるような支援が、圧倒的に足りていないと感じています。里親制度の課題については、児相が最初の相談受付から措置までの全てを担うシステムであることや、里子と実親、里親との3者の異なる立場である全員の相談支援を行う同時に、時に立場によって厳しいと受け取りかねない措置の執行機関でもあることは、里子はもちろん、実親も里親も、児相職員すらも苦しくなるような構造上の問題だと個人的には捉えています。それぞれの専門性や異なる役割を包括的につなぐことで、全国のどこの地域であっても養育の質が担保される、子ども家庭福祉分野のソーシャルワーカーの配置が急務のひとつではないでしょうか?そしてこれは、私の職業がソーシャルワーカーで自戒の念をこめてなのですが、 『虐待防止は母子保健から―指導でなく支援』という地域保健のブックレットで、鷲山先生が「善意はしばしば有害であり、熱意は非常に危険である、さらに正義はもっと危険」とおっしゃられています。

不調という経験を乗り越えた方の工夫や役に立った周囲の方の手助けや児相や支援機関の支援がどういうものだったか関心があります。

(志賀志穂さん 回答)
実子がいなく乳児の育児の知識が不足していた私が、ある日突然に0歳児のママとなったプレッシャーに加えて、当時、我が家の担当の児童相談所の職員さんは熱心で頼りがいはあったけれども男性で育児経験がなく、赤ちゃんのお世話の些細な悩みについて相談しても、即答でアドバイスが得られない状況でした。そこで児相の職員さんに申し訳ないなと心苦しかったけれど、そんな不安もちゃんと伝えていました。児童相談所が解決策として、乳児院の看護師さんも一緒に家庭訪問に来てくれるようになって、ミルクの飲ませ方のコツなどをとても分かりやすく、教えてもらえるようになりました。当時の私はダメな里親だと思われるのではないか?と内心は不安もあったけど、遠慮せずにこういう支援が足りてないと相談することで、きちんと応えてくれました。親の方がヨチヨチ歩きでおそらく頼りない我が家であったけど、不安や心配ごとがたくさんあったおかげで、児相だけでなくたくさんの専門職の皆さんに助けてもらいながら、まさにチームで子育てすることが出来ました。だから自らも頑張る力が自然と湧いてきて、地域の児童館や支援センターのワークショップやママ向けの勉強会などに積極的に参加することが出来ました。インターネットや公民館のチラシを使って地域の育児支援について調べてみたら、知らなかっただけで実にたくさんの支援がありました。児童相談所や里親支援の機関が主催する行事で出会える、里親として悩みが一緒で分かりあえる仲間のネットワークに感謝しながらも、敢えてマイノリティーなコミュニティだけに留まらないよう、意識的に心がけていました。小さな子どもと一緒に積極的に地域に飛び込んで行った経験によって、それぞれの育児コミュニティの良さも短所も知ることができました。また地域で知り合ったママ友と協力して高齢ママの育児サークルを作ったりするなど、地域には現役の育児世帯だけなくても、育児を助けたいとの思いを持っている人たちがたくさんいることを、身をもって体験しました。里親支援と地域の育児支援、たくさんの大人の優しい眼差しに見守られながらスクスクと育っていく息子と共に、私も親として育ててもらっています。

私自身特養に挑戦しようとしていますが40歳を過ぎて特養に挑戦することを贅沢だ、エゴだと言われ、自分のわがままで子どもを欲しがる事は間違ったことなのか心が時々揺れてしまうことがあり、アドバイスをお聞きしたいです

(志賀志穂さん 回答)
子どもの幸せのための制度であることは決して忘れてはいけないのですが、興味をもつきっかけについては、エゴであっても何でもいいと思っています。なぜかと言いますと、児童相談所の特別養子縁組里親の登録となるまでの過程は長く、研修をひとつずつステップアップするごとに、児相の職員と夫婦でふり返る時間や場が丁寧に設けられているからです。育児に対する価値観や家族観について夫婦で話し合う機会がたくさんあるので、夫と子どもを迎え入れる決心を積み重ねていく、大切な時間となりました。里専の方に夫婦の悩みを打ち明けたり、子どもと暮らしていく将来のイメージを捉え直しては、また一から積み上げていく。さらに児童養護施設の実習で、社会的養護が必要な子ども達との出会いを通じ、綺麗ごとだけでは済まされない里親としての覚悟をより強くすることができました。夫婦の関係性も研修と共にステップアップして、夫とズレがあってもパートナーシップで乗り越えていく、夫婦の足並みを揃えるための期間でもありました。だからきっかけはどうであっても、その後には2人だけではなく、夫婦の思いに寄り添ってくれる児相の職員さんと一緒に「子どもの幸せ」について、丁寧に何度も考える機会がありますので、ご安心ください。

⑥志賀志穂さんより、メッセージをいただきました

皆さまの貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
家族一同、心より感謝いたします。

私たちの正直すぎる(?)家族の物語をお聞きくださった、皆さまそれぞれが、いろんな湧き上がってくる感情をお持ちになられたかと思うのです。「そうだよね」とか「それは違うんじゃないかな」とか、悲しいな、嬉しいななど。
正解を導き出すことが、お話させていただいた目的ではありません。そして皆さまが感じられた心地よい気持ちや、悲しい気持ちすらも、地域で暮らす社会的養護が必要な子ども達へ向けられた皆さまの優しい眼差し=子ども達への尊い愛情だと思うのです。皆さまそれぞれが暮らしていく地域で、どうかそのお気持ちを胸に大切になさってくださると嬉しいです。
特別養子縁組は家族全員に血縁がないからこそ、それぞれの個性を尊重できる…たとえ小さな息子であっても一人の人間として(会場&オンラインの皆さまが熱心に私の話を心を寄せて聞いてくださったように)丁寧に気持ちを聞くことができる関係性です。
だからこそ私は、血縁がないことに…どこまでも広がる自由を、命のバトンを繋いでいく息子や養子の子ども達の未来に…希望を感じているのです。

(2023年6月10日 志賀志穂さんよりご寄稿いただきました)

⑦さいごに・・・(まとめ)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
講師を引き受けてくださった志賀志穂さん、そして、参加してくださった皆様、さらに、このレポートを読んでくださった皆様に心より感謝申し上げます。

かわさき里親支援センターさくらは、このイベントを終え、より一層、地域に特別養子縁組制度や里親制度の啓発をしていくことの大切さを学びました。

「特別養子縁組が特別ではない未来」(志賀さんのお言葉より)

「子どもたちが幸せに健やかに育つことのできる社会」

を目指して、かわさき里親支援センターさくら職員一同、これからも、精進して参りたいと思います。

当日の進行については、時間超過や、オンライングループワークでの配慮不足、不手際など参加者の皆さまには、大変ご迷惑をおかけいたしました。アンケート回答でいただいたご意見は、今後のイベント開催に活かせるようにしていきたいと思います。

最後にお願いがあります。このレポートページをシェア(下記ボタンより)していただくことで、特別養子縁組制度や里親制度の啓発につながります。ぜひ、あなたも啓発の応援団になってください